【後編】田沢切手・大正毛紙の後期毛紙の用紙判定方法を考えてみた

 前編から

 続いて、後期毛紙の特徴を調べるためのチェックリストを作成した。写真の種類と大項目が対応関係にあり、まず最初に全体写真を使って地合を調べ、続いて中解像度の写真を使って紙層構造をしらべる。そして、高解像度写真を使って繊維終端や目打ち縁を調べるという流れになる。

Noチェック項目Yes / No観察ポイント
1-1地合いが完全に均一ではないわずかな濃淡・ムラがある
1-2紙面がツルツル・ガラス状でない繊維感が残る
1-3極端な薄厚・穴状ムラがない安定した抄紙
チェックリスト① 地合い
Noチェック項目Yes / No観察ポイント
2-1繊維が平面ではなく層状に重なる奥行き感がある
2-2繊維の向きがランダム一方向配列でない
2-3細い繊維だけで面が構成されていない太さのばらつきが見える
チェックリスト② 紙層構造
Noチェック項目Yes / No観察ポイント
3-1繊維が途中で自然に消えるフェードアウトする
3-2スパッと切れた端が少ない直角・鋭角断面が少ない
3-3繊維が他繊維に絡み込んで終わる孤立終端でない
チェックリスト③ 繊維終端
Noチェック項目Yes / No観察ポイント
4-1目打ち縁から長繊維が引き出されている房状・ヒゲ状
4-2繊維が紙層方向に寝て伸びている垂直に切れていない
4-3穴の縁が一様にシャープでないギザつき・柔らかさ
チェックリスト④ 目打ち縁

 表に示す①から④のチェックリストを使って先程無作為に選んでおいた20枚の切手を判定してみた。結果は下。全て後期毛紙と判定できるようになったが、No.12の切手は最初に選んだ目打ち部の写真だと、後期毛紙ではないと判定されたので、特徴がよりよく出ていそうな目打ちの写真に変更して判定した結果である。目打ち部の写真は人力で特徴がよく出ている部位を選定する必要があるので、この判定プロセスをもう少し改良する必要があるようだ。 

No.①地合い②紙層構造③繊維終端④目打ち縁総合判定補足メモ
1◎ 後期毛紙(確定)典型的毛紙像
2◎ 後期毛紙(確定)木綿骨格明瞭
3◎ 後期毛紙(確定)目打縁が強い
4◎ 後期毛紙(確定)層状構造安定
5◎ 後期毛紙(確定)フェード終端多数
6◎ 後期毛紙(確定)房状毛羽あり
7◎ 後期毛紙(確定)標準的後期型
8◎ 後期毛紙(確定)やや密だが問題なし
9◎ 後期毛紙(確定)木綿+充填型
10◎ 後期毛紙(確定)終端絡み込み良好
11◎ 後期毛紙(確定)安定した抄紙
12◎ 後期毛紙(確定)目打縁再撮影で確定
13◎ 後期毛紙(確定)層状感やや強
14◎ 後期毛紙(確定)繊維太細混在
15◎ 後期毛紙(確定)標準〜やや粗
16◎ 後期毛紙(確定)毛羽立ち自然
17◎ 後期毛紙(確定)境界要素なし
18◎ 後期毛紙(確定)非常に典型的
19◎ 後期毛紙(確定)毛紙感強い
20◎ 後期毛紙(確定)やや密だが合致
チェックリストを使った判定結果

 最後に結果を総括してみる。後期毛紙を一言で言い表すと、中倍率で層があり、高倍率で繊維が自然に終わり、目打ち縁で紙層の中から長繊維が“引き抜かれて裂けた痕跡”が1か所でも確認できるとのこと。紙質は「密/粗」「毛羽の量」「夾雑物の多少」などの個体差は存在するが、繊維終端と目打ち縁は20枚を通して安定した識別因子だったとのこと。

 クラスタわけもでき、A:典型・教科書型後期毛紙は7枚、B:粗質・毛羽強調型は5枚、C:緻密・上質寄り後期毛紙は4枚、D:夾雑物多量型は4枚という結果になった。Dは着色繊維が多いものも含まれ、後期毛紙は教科書的には着色繊維が少ないことになっているが、想定よりも多い着色繊維が含まれる切手が何点か見つかった。着色繊維に囚われて用紙を判定すると、最初期毛紙と誤判定することになり注意が必要だ。なぜこのようなクラスタ分け結果になったのか詳細な解析が必要ではあるが、それなりの枚数の後期毛紙の中心像が得られたと思われる。

 話が変わるが、大正毛紙の原料は最初期毛紙と初期毛紙はワラと木綿、中期毛紙はワラと亜硫酸パルプ、後期毛紙はさらし亜硫酸パルプと木綿だから、表面写真でどの繊維があったか2種類特定すれば、原料の比率を調べなくても用紙を決められるんじゃないかという疑問が浮かんだので、更に調べてみた。

 AIによると、裏面+構造チェックと組み合わせれば有効だが、先程検証した裏面・構造ベースのチェックリスト方式の方が精度がはるかに高いらしい。この方法の改良余地はありそうだったが、田沢切手・大正毛紙13銭切手に対してチェックリストで判定した結果が良好だったので、追加調査は終了。

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