新小判切手は旧小判切手、U小判切手に続くシリーズで、1888年3月10日以降に発行された普通切手のシリーズ名である。発行された額面は全部で10種類あり、5厘 灰、3銭 うす紫味赤、4銭 黃オリーブ、8銭 青紫、10銭 暗いだいだい、15銭 紫、20銭 赤味だいだい、25銭 うす緑、50銭 赤茶、1円 赤がある。ビジュアル日専 小判・菊切手編によると、この新小判切手を印刷するにあたり使用した実用版は2種類あり、100面版で印刷したものを初期印刷、400面版で印刷したものを後期印刷と定義されているようだ。また、100面版と400面版とで使用した用紙も異なっており、1円以外の額面の切手は前者が後期普通紙、後者が最後期普通紙を使っている。
後期普通紙は1888年(明治21年)~1893年(明治26年)に使用された用紙で、旧小判切手に使われた中期白紙ほど漂白度は高くなく、第三号抄紙機もしくは改造第二号抄紙機を使って製造されたようだ。一方、最後期普通紙は1891年(明治24年)以降に使用された用紙で、後期普通紙より良質な用紙で第四号抄紙機を使って製造されたようである。
新小判切手は旧小判切手やU小判切手とは異なり、まず用紙で分類するのではなく、印刷時に使用した実用版で分類するのが基本のようだ。察するに、用紙は徐々に徐々に移行していくものであり、0/1で後期普通紙、最後期普通紙とに分けることができず、誰でも同様の定義で区別することが難しいので実用版の違いを前期印刷と後期印刷とに呼び替えているのではないかと思う。
これらの情報だけでは実際に用紙の分類、つまり100面版/前期印刷/後期普通紙と400面版/後期印刷/最後期普通紙の方法がさっぱりわからないので、例のごとく新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズを読み込んでみた。それによると、初期印刷と後期印刷の切り替わりは額面によって異なること、初期印刷は新小判切手の発行枚数と比較して相当少ないことがわかった。
目打ちによる分類
新小判切手を100面版/前期印刷/後期普通紙と400面版/後期印刷/最後期普通紙を分類するうえで、重用な情報が、目打ちのようである。新小判切手の目打ちは12と13の2種類しかなく、額面によって違いはあるかもしれないが、1892年(明治25年)頃までは目打ち13が100%使用され、1896年(明治29年)まで徐々に目打ち13に置き換わり、それ以降は目打ち13のみが使用されたようである。後期普通紙と最後期普通紙の切り替わり時期が1891年(明治24年)~1893年(明治26年)であることから、用紙と目打ちはほぼ同時期に移行していることになる。つまり、境界領域の例外はあるが、目打ち13であれば100面版/前期印刷/後期普通紙の可能性が高く、目打ち12であれば400面版/後期印刷/最後期普通紙の可能性が高いことを意味している
初期印刷と後期印刷の分類
ここで重用なのは実用版、つまり100面版か400面版を使用済み切手でどう見分けられるのかである。新小判3銭 と新小判4銭は定常変種を使って区別する方法論が確立されているようだ。3銭切手については、「新小判切手3銭の初期印刷と後期印刷の分類に挑戦してみた」にまとめた。また、詳しく触れられておらず詳細はわからないが、新小判5厘と新小判50銭は版の摩擦具合から初期印刷と後期印刷の区別ができ、1円でも分類方法が確立されつつあるとのことである。また、新小判20銭は印刷色で区別でき、印刷面が黄色みを帯びていれば初期印刷、赤味が強ければ後期印刷と分類できるようだ。そして、その他の額面については用紙、色調、目打ちから総合的に判断すると良いようだ。行き着くところ、初期印刷と後期印刷の分類を0/1で分けることはできず、多少個人差があるということだ。個人的に楽しむ分にはそれで十分。
1円以外の額面の用紙の分類
となると、目打ちは目視で数えられるので良いとして、用紙と色調の見分け方をどうするかである。ビジュアル日専 小判・菊切手編によると、色調は初期印刷と後期印刷とでほぼ同じ色調のものが多く、事実上区別できない額面が多い。となると、肝は用紙の見分け方である。にも関わらず、新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズによると、用紙の分類はとても難しいようだ。大雑把には、初期印刷で使われた後期普通紙は用紙が薄くて表面が荒れていて、印刷がかすれる傾向があるのに対して、後期印刷で使われた最後期普通紙は用紙が厚くて表面が滑らかで、、印刷が明瞭な傾向があるようだ。ここで需要なことがあって、用紙は段階的に技術力が向上していくものであり、特に初期印刷から後期印刷に切り替わりの時期、つまり1893年(明治26年)前後の用紙は専門家でも判断に苦労するようである。そして、最終的には用紙の厚さ、弾力、漉き目の3点から総合的に判断するとのことである。
1円の用紙の分類
一方、新小判切手1円の用紙は他の額面と異なる用紙を使っており、エスパルト紙という輸入紙を使っているとのことである。新小判1円は菊の模様のエンボス加工が施されており、最高額面としての威厳を感じるデザインになっているのだが、このエンボス加工をするためにエスパルト紙を使っているようだ。また、1円切手は推定発行枚数が172万枚と、他の額面と比較して少なく、実用版として100面版の他に400面版が作られたかどうかはわかっていないらしい。なので、新小判1円だけは他の額面と前期印刷と後期印刷の定義が異なっており、薄手のエスパルト紙を使ったものを前記印刷、厚手のエスパルト紙を使ったものを後期印刷と定義されている。
消印による初期印刷の特定
郵便用消印としては、新小判切手が発行された1888年(明治21年)から丸一印が使用された。その後、1900年(明治33年)から順次丸二型日付印が使われ始めた。つまり、順次丸二型日付印が押されている新小判切手は後期印刷と確定する。
電話・電報料金用消印としては小型二重丸電信印が1888年(明治21年)4月から1890年(明治23年)4月まで使用され、その後、丸一印に置き換わった。つまり、小型二重丸電信印が押されている新小判切手は初期印刷と確定する。
100面版から400面版の移行時期は両者が混ざっていったこと、400面版が出現した正確な時期がわからない額面が多く存在するが、1891年(明治24年)~1893年(明治26年)に後期普通紙から最後期普通紙に移行したことを考えると、1890年(明治23年)頃までの消印であれば初期印刷と確定できそうだ。

