新小判切手1円の初期印刷と後期印刷の分類に挑戦してみた

切手
新小判1円切手

 用紙の違いで分類する旧小判切手切手やU小判切手と違い、新小判切手は印刷時期で分類をするのが基本である。新小判切手の初期印刷と後期印刷の見分け方を調べてみたで印刷時期を特定する方法をまとめたので、前回の「新小判切手4銭の初期印刷と後期印刷の分類に挑戦してみた」に続いて、新小判切手1円に対して印刷時期を特定してみようと思う。

新小判1銭の100面と400面版の見分け方

 新小判1円切手はその他の新小判切手と用紙が異なり、エンボス加工を施す関係からエスパルト紙を使用している。このエスパルト紙は紙の分厚さで分類でき、ビジュアル日専 小判・菊切手編では2種類に、新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)では3種類に分類している。分類数は違うが、後者の極薄エスパルト紙と薄手エスパルト紙は前者の薄手エスパルト紙に、後者の厚手エスパルト紙は前者の厚手無地紙エスパルト紙にマッピングできるようだ。実は手持ちの1円切手の分厚さを感覚的に調べた際に、3種類あるように思えていたので、ようやく謎が解けた。

 時系列的には、最初期に極薄エスパルト紙、初期に薄手エスパルト紙、後期に厚手エスパルト紙と移行したとのこと。ビジュアル日専 小判・菊切手編では新小判1円以外の新小判切手では100面版を使うものを初期印刷、400面版を使うものを後期印刷と定義されていたが、新小判1円はこのわかりやすい用紙の特性により、便宜的に極薄エスパルト紙と薄手エスパルト紙を使うものを初期印刷、厚手エスパルト紙を使うものを後期印刷として扱っているようだ。

 新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)では、最新の研究成果が掲載されており、実用版の特徴を使って版分類する方法にまで踏み込んでいた。それによると、100面版と400面版とでは実用版が異なり、100面版はつぶれぎみ、400面版は明瞭という差があるようだ。特に、左右の「驛鈴」という文字を見るとわかりやすいとのこと。

 そして、ビジュアル日専 小判・菊切手編では薄手エスパルト紙を使うものを初期印刷/100面版と定義していたが、新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)の最新の研究成果を適用すると、薄手エスパルト紙は後期印刷/400面版でも利用されていたことがわかったようだ。まとめると、下の表のようになる。

新小判切手 (「日専」を読み解くシリズ)ビジュアル日専 小判・菊切手編用紙での分類実用版での分類
初期印刷後期印刷初期印刷
(潰れ気味)
後期印刷
(明瞭)
極薄エスパルト紙薄手エスパルト紙
薄手エスパルト紙
厚手エスパルト紙厚手エスパルト紙
新小判1円の初期印刷と後期印刷の見分け方

分類に挑戦

 分類方法がわかったので、挑戦してみる。手持ちの新小判1円切手は7枚。調べたところ、極薄エスパルト紙が2枚、薄手エスパルト紙が2枚、厚手エスパルト紙が3枚見つかった。新小判1銭は厚みの違いが大きいので、ここまでは切手をたわませればすぐに分類できる。

 続いて、極薄エスパルト紙と厚手エスパルト紙の文字を顕微鏡で確認してみた。下の写真をさらに拡大しないとわかりにくいのだが、確かに後者のほうが鋭く感じる。この写真を100面版と400面版の見本として目視で薄手エスパルト紙を分類したところ、2枚とも100面版に近かった。見本があれば、どちらに近いか80%くらいの自信で分類できそうだ。

 というわけで、極薄エスパルト紙・初期印刷が2枚、薄手エスパルト紙・初期印刷が2枚、薄手エスパルト紙・後期印刷が0枚、厚手エスパルト紙・後期印刷が3枚という結果になった。

極薄エスパルト紙の「驛」の文字
厚手エスパルト紙の「驛」の文字

 AIで7枚の印刷面を比較した場合も同様の結果なるか試したところ、写真の解像度が中の高くらいのものが求められたが、近い結果を得ることができた。注意ポイントは、新小判1円の100面版と400版の分類は版の特徴を見る必要があるので、用紙とインクの特性を除外して調べることである。そこで、AIでの分析では版の特徴として、銭の再現性、角・エッジの保持具合、細線・点の残り具合、銭の消失・不自然な太り・潰れ、ムラを評価軸として調査した。

 また、注意点は厚手エスパルト紙の印刷面のインクの乗りが良い切手を、100面版だと識別したので、プロンプトとしてはもう少し改良が必要そうだ。

初期印刷と後期印刷の印刷の特徴を調査

 初期印刷と後期印刷のサンプルを確定できたので、AIが誤判定をした切手を除いたうえで、印刷面の特徴をAIで調べてみた。インクの乗り方、銭のシャープさ/エッジ、インクの滲みをまとめると表「AIによる100面版と400面版の特徴分析」のようになる。初期印刷と後期印刷の特徴通り、実用版の影響を排除していない調査ではあるが、初期印刷よりも後期印刷の方が良好な印刷であることを確認できた。

評価軸初期印刷グループ後期印刷グループ
インクの乗り方インクが面状に広がりやすく、細線部でインク保持量が不安定線状にインクが乗り、均一で過不足が少ない
線のシャープさ・エッジ画の端が丸まりやすく、内部の細部(点・短線)が欠落・癒合しやすい画の始端・終端が明確で、彫刻形状がそのまま転写されている
インクのにじみ・滲み方向線の外側方向への滲みが優勢で、曲線部で放射状の滲みが出やすい滲みが少なく、出る場合も線方向に沿った軽微な伸びに留まり、外側への拡散がほぼない
AIによる100面版と400面版の特徴分析

初期印刷と後期印刷の用紙の特徴を調査

 最後に、極薄エスパルト紙と薄手エスパルト紙と厚手エスパルト紙に対して、繊維1本1本を追える裏面の写真を使ってAIで分析をした。分析結果は表を参照。まとめると、極薄エスパルト紙は繊維1本1本がはっきり見え、地合いのムラや異物がそのまま表に出やすい。薄手エスパルト紙は繊維は確認できるが絡み合って面を形成し、地合いは比較的安定し、ムラは緩和される。厚手エスパルト紙は繊維は層の中に沈み、地合いが良く、全体が均質に見える。極薄→薄手→厚手と進むにつれて、用紙の改良も進んだようだ。

観点極薄エスパルト紙薄手エスパルト紙厚手エスパルト紙
繊維の分離度高い。単繊維が明瞭に独立して見えやすい中程度。絡みを保ちつつ輪郭は追える低〜中。繊維は層内に沈み輪郭は穏やか
繊維の太さ感細径主体。太さ差がそのまま視覚化される細径主体+一部中径。ばらつきは緩和細径主体だが厚みで平均化されやすい
繊維配向局所的に流れが顕在化しやすい概ねランダム。弱い方向性が点在方向性は弱く、面内で埋没
地合いの均一性低め。薄さゆえムラがそのまま現れる中〜やや高め。粒径の細かいムラ高め。粗密差は平均化され破綻しにくい
表面の緻密さ非常に開放的。繊維端が露出中程度。凹凸は残るが抑制される比較的緻密。表層が安定
光の反射点状・線状の強いキラつき細かな点状反射が散在面反射主体。鈍く落ち着く
異物・着色点少数でも目立ちやすい少量。散発的で主張は弱い視認頻度が低く埋没しやすい
色味(紙色)灰白色〜冷調寄り(透過影響大)灰白色〜わずかに温調灰白色〜やや温調、厚みで均質化
解像度変化への耐性低い。解像度上昇で印象が激変中程度。強調されるが破綻しにくい高い。解像度差で印象がほぼ変わらない
極薄エスパルト紙と薄手エスパルト紙と厚手エスパルト紙の比較
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