小判切手の5厘は低額面のため発行枚数が多かったためか、入手する機会が比較的多いように思う。そんなわけで数十枚くらい5厘の切手が集まったのだが、あることに気がついた。実は、旧小判切手5厘と新小判切手5厘は色もデザインも非常に良くにていて、それが旧小判5厘なのか新小判切手の5厘なのか全く区別できないのである。小判切手の用紙違いや色違いを網羅的に掲載するカタログであるビジュアル日専 小判・菊切手編をいくら読み込んでもその見分け方が記載されていないため違いがわからない。
色は旧小判5厘を一言で表すと青味灰、新小判5厘を一言で表すと灰なので、旧小判5厘の方がやや青みがかっているようだ。ただし、旧小判5厘は木綿紙(茶紙)だけ茶灰となっている。少なくても手持ちの切手の中に明らかに青味がかっているものは無さそうだ。
どうすれば確信をもって新小判5厘であると言い切れるか悩んでいたところ、旧小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)に見分け方が書いてあった。それによると、実は容易に分類できるとのこと。使用済み切手で適用できそうなのは、用紙や目打ちのようだ。また、印刷に使った実用版も異なり、旧小判切手は80面版、新小判切手は100面版と400面版の2種類があるとのこと。使用済みであれば消印でも大雑把でよければ区別できるようだ。まとめると違いは表「旧小判切手5厘と新小判切手5厘の特徴」のようになる。
| 実用版 | 旧小判切手5厘 80面版 | 新小判切手5厘 100面版 | 新小判切手5厘 400面版 |
| 発行年月日 | 1876(明治9)/5/17 | 1989(明治22)/8/19 | |
| 用紙 | 厚手無地紙、エスパルト紙、無地紙、木綿紙、ワラ紙 | 後期普通紙 | 最初期毛紙 |
| 目打ち | 8 1/2、10、11、11L、12、12 1/2 | 13 | 12、13 |
| 消印 | 明治9年以降、ボタ印、二重丸印が主体 | 明治22年10月以降、丸一印が主体 | 明治25年以降、丸一印や年号2字などが主体 |
| 発行枚数 | 約314万枚(推定) | 約4億657万枚(推定) | |
ここで、旧小判5厘にある目打ち12と12 1/2だが、旧小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)によると目打ち12は明治12年から14年にかけて散発的に発行されたこと、目打ち12 1/2は明治10年ごとと12年頃に散発的に発行されたことがわかっているらしい。また、推定314万枚(推定)の発行枚数うち、これらの目打ち12が発行された年の発行枚数が10万枚にも満たず、目打ち12 1/2が発行されたとしの発行枚数は1000枚もあるかないか程度のようだ。しかも、その年に発行された切手の多くが目打ち10のものらしい。つまり、目打ち12や12 1/2の旧小判切手5厘はほぼ手に入らないということになるので、目打ち12のものは新小判切手5厘であると機会的に分類しても良さそうである。
まとめると、目打ち12もしくは13であれば新小判5厘、それ以外であれば旧小判5厘ということになる。分類方法がわかったところで、手持ちの5厘切手を分類してみた。結果は、目打ちゲージを使って測定すると11.5あたりのものが3枚みつかった。その3枚の写真が「旧小判5厘切手かもしれない3枚の印刷面」と「旧小判5厘切手かもしれない3枚の裏面」である。この当時の目打ちは機械によってピッチが異なるので、アバウトに11もしくは12に丸め込まれるとのことだが、どちらに丸め込まれるのかさっぱりわからない。
気になることがあって、ビジュアル日専 小判・菊切手編によると、旧小判5厘の木綿紙(茶紙)は目打ちが10のものだけらしいことと、印刷面の色味は新小判5厘だと思われる切手と似通っていることと、どれも丸一印が押されているように見えることである。一方、この3枚の用紙の特徴は写真ではわかりにくいが、どれも異なっており、一番左は固くて分厚く、真ん中は中間、一番右は薄くて印刷面が裏写りしている。


旧小判5厘で目打ちが11の用紙は、厚手無地紙、木綿紙(粗紙)、ワラ紙の3種類である。ただし、ビジュアル日専 小判・菊切手編によると旧小判5厘の厚手無地紙の使用済み価格が記載されていない、つまりほぼ存在しないことを意味している。
印刷面をそれぞれAIで判定すると、一番左と中央はスレート系、一番右は灰という結果だった。肉眼では青っぽくなくても、デジタル値で判定すると青味が混ざっているとのこと。色は本当に難しい。
サンワダイレクトのUSB 4K 840万画素の顕微鏡を使って、400倍で繊維を観察。田沢切手・大正毛紙でワラと木綿をさんざん観察してきたので、ワラと木綿とは見分けられるようになったつもりである。観察の結果、3枚の切手はワラ系の用紙のようだ。また、新小判切手は後期普通紙と最後期普通紙が使われているのだが、新小判5厘であると確定した切手の用紙とにているのが中央、それよりも著しく分厚いのが一番左、それよりも薄いのが一番右という結果になった。
これらを総合的に考えると、目打ち、色、原料、消印、用紙の印象全てを満たせないので、確実に旧小判5厘だと断言できるものはなかった。とはいえ、この3枚のうち少なくても1枚、多くて2枚は旧小判5厘ではないかと思うのだが、現在の技術力ではこれが限界なので、調査を終了。

