株価にインパクトを与える機関投資家のイベント

ETFの配当換金売り [7/8と7/10]

ETFの配当換金売りは、ETFの決算時期に発生する株式市場の一時的な売り圧力を指します。ETFは決算期間中に得た配当や利子などの収益を、分配金として投資家に支払う必要があります

この分配金を捻出するため、ETF運用会社は保有する株式の一部を売却します。日本では7月8日と10日にETFの決算が集中しており、この2日間で約1兆円超の売り注文が出ると予想されています。これは一時的な株価下押し要因となる可能性があります。ただし、この現象は毎年繰り返されるため、多くの投資家にとっては織り込み済みの要因とも言えます

また、分配金を受け取った後に銀行などの機関投資家がETFを売却する可能性もあり、その影響は決算日以降も続く可能性があります

重要なのは、この換金売りは一時的な需給要因であり、長期的な株価トレンドには大きな影響を与えないという点です。むしろ、短期的な株価下落を買い場と捉える投資家もいるでしょう。ETFの配当換金売りは、株式市場の季節性を理解する上で重要な要素の一つですが、その影響は限定的で一時的なものと考えられています。

日経平均株価の定期入れ替えに伴うリバランス [4月と10月]

日経平均株価の定期入れ替えは、個別銘柄の株価に顕著な影響を与える重要なイベントです。日経平均株価連動型ETFは、日本の株式ETF市場で最も人気のある商品の一つです。複数の運用会社が提供しており、合計すると数兆円規模の資産を運用していると推測されます。

新規採用銘柄については、通常株価にとってプラス要因となります。これは、ファンドなどのインデックス買いが入るためです。発表後、特に発表翌日に大きく上昇する傾向があり、その後も数日間上昇が続くことがあります。ただし、採用による株価上昇効果は、除外銘柄の下落と比べると比較的小さいとされています。

一方、除外銘柄は株価のマイナス要因となります。インデックス運用のポートフォリオから外されるため、売り圧力が生じるためです。除外銘柄は発表日の翌日に大きく下落し、その後も下落傾向が続くことがあります。除外による株価への影響は、採用銘柄よりも大きい傾向があります。これらの影響は一時的なものであり、長期的には企業の実績や市場環境に基づいて株価が形成されます。

しかし、入れ替えの発表前後で対象銘柄の株価が大きく変動する可能性があるため、市場関係者の注目を集めます。また、入れ替えによって業種バランスが変わることで、特定のセクターの比重が変化し、関連銘柄の株価にも影響を与える可能性があります。さらに、日経平均の定期見直しは、関連する他の指数にも波及効果をもたらします。

MSCI指数の定期入れ替えに伴うリバランス [2月、5月、8月、11月]

MSCIは「Morgan Stanley Capital International」の略称で、アメリカの金融サービス会社であるMSCI Inc.が開発・公表している株価指数です。

MSCI・ACWI指数 (All Country World Index) は先進国市場と新興国市場の両方を含み、約50カ国の大型株と中型株で構成されています。MSCIは世界の投資可能な株式市場の約85%をカバーしており、グローバル株式市場のパフォーマンスを測定するベンチマークとして広く使用されています。

MSCI ジャパン・スタンダード指数は日本の大型株と中型株で構成され、日本の株式市場の時価総額の約85%をカバーしています。約300銘柄から構成され、国内外の機関投資家や個人投資家が日本株式市場のパフォーマンスを測定するベンチマークとして広く使用しています。

MSCI指数は年4回(2月、5月、8月、11月の各月末)、四半期ごとに定期的な見直しと構成銘柄の入れ替えが行われます。実際の入れ替え実施の約2週間前に、変更内容が発表されます。MSCI指数に採用されることで、その銘柄への国際的な投資が増える傾向があります。特に、MSCI指数をベンチマークとする海外の機関投資家からの注目度が高まります。

銘柄入れ替えに伴う指数連動型ファンドによるリバランスは例えば、当月末の引け値で実施されます。

ETFや投資信託の保有比率調整 [四半期ごと / 半年ごと / 随時]

ETFや投資信託の保有比率調整は、主に以下のタイミングで行われます:

  1. 定期的な見直し:
    多くの投資信託では、四半期ごとや半年ごとなど、定期的にポートフォリオの見直しを行います。この際に、各銘柄やセクターの比率を調整します。
  2. 市場環境の変化時:
    株式市場や債券市場の大きな変動があった場合、ファンドマネージャーは保有比率を調整して、リスクを管理したり、新たな投資機会を捉えたりします。
  3. 資金の流出入時:
    投資家からの大規模な資金流入や流出があった場合、ファンドの規模に合わせて保有比率を調整する必要があります。
  4. 運用方針の変更時:
    投資信託の運用方針が変更された場合、それに合わせて保有比率を大幅に調整することがあります。
  5. 決算期前後:
    特に毎月分配型の投資信託では、決算期前後に保有比率の調整が行われることがあります。これは分配金の支払いに備えたり、次期の運用戦略を反映させたりするためです。
  6. 新規銘柄の組入れや既存銘柄の除外時:
    投資対象として魅力的な新規銘柄を組み入れる際や、既存の保有銘柄を除外する際に、全体のバランスを保つために他の銘柄の保有比率も調整されます。
  7. リバランス時:
    特にインデックス型の投資信託では、四半期ごとや半年ごとなどの定期的に基準となる指数の構成比率に合わせてリバランスを行います。これにより、市場の変動によって生じた乖離を修正します。
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