用紙の違いで分類する旧小判切手切手やU小判切手と違い、新小判切手は印刷時期で分類をするのが基本である。新小判切手の初期印刷と後期印刷の見分け方を調べてみたで印刷時期を特定する方法をまとめたので、前回の「新小判切手1円の初期印刷と後期印刷の分類に挑戦してみた」に続いて、新小判切手20銭に対して印刷時期を特定してみようと思う。
新小判20銭の100面と400面版の見分け方
ビジュアル日専 小判・菊切手編によると、新小判20銭切手は単片切手の100面版と400面版の判別方法が確立されていないとのことだが、新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)によると、色調で分類する代替案が記載されている。どうやら1894年(明治27年)頃を境に色調が変わったようだ。新小判20銭切手はこの色調の変化を使って分類するのが基本のようだ。
| 初期印刷(100面版) | 後期印刷(400面版) | |
| 色調 | 黃味がつよい | 赤味がつよい |
ここで問題になるのは、切手の色調はビジュアル日専 小判・菊切手編に掲載されているのだが、初期印刷の色調は黃味だいだい、だいだい、黃だいだいの3種類がある。このうち、だいだいは後期印刷の赤味だいだいとうす赤味だいだいの色調と良く似ていて、素人では見分けがつかないのだ。初期印刷のだいだいは価格的にも極端に珍しいものでもなさそうなので、最終的にはだいだいを見分けることが重要そうだ。
分類に挑戦
手持ちの新小判切手はわずか2枚。どちらも肉眼的には同じ色調であるが、ビジュアル日専 小判・菊切手編の写真と比較すると黄味がつよいものと同系色だ。つまり初期印刷(100面版)となる。数えやすい上下の目打ちピッチを見ると左側の切手は13、右側の切手は12。ん、12??ビジュアル日専 小判・菊切手編には初期印刷の目打ち12は掲載されていない。新小判20銭の定義では初期印刷を1894年(明治27年)頃まで伸ばしている。一方、新小判切手 (「日専」を読み解くシリ-ズ)によると、新小判20銭切手のピッチ12が出現した最初期データが1894年(明治27年)とのこと。つまり、この切手は1894年(明治27年)頃のものと考えると全ての辻褄は合うので、時系列的な矛盾なく説明できるのだがあまりにもピンポイントすぎる。

ヤフオクで調査
この結果に不安を感じたので、ヤフオクで新小判20銭切手を調べてみた。なんと、この切手よりも遥かに黄色味が強い新小判20銭切手があるではないか。図書印刷なので当然のことなのだが、ビジュアル日専 小判・菊切手編の色味が実際と違っていたようだ。つまり、この2枚の切手は赤味が強いことになるので、後期印刷(400面版)だったうだ。
前期印刷と後期印刷の印刷の特徴を調査
続いて、印刷面を見るともう少しわかることが無いか調べてみた。新小判3銭切手と新小判4銭切手は初期印刷/100面版と後期印刷/400面版を区別できるので、AIでこの特徴と今回の2枚を比較してみた。
左側の切手は後期普通紙よりも技術的に進んでおり、右側の切手はさらに技術的に進んで最後期普通紙の性格を持っているようだ。ただし、最後期普通紙とするならば初期段階のようだ。
| 観点 | 後期普通紙(基準) | 最後期普通紙(基準) | 左側の切手 | 右側の切手 |
|---|---|---|---|---|
| インクの乗り方 | 紙面の凹凸を拾い、ベタ部に微細な濃淡ムラが出やすい | ベタ部が比較的均一。インクが紙内部に安定して沈む | ムラは小さく、面としてまとまりがある。後期普通紙より安定 | 均一性が高く、ベタ部の荒れが少ない。最後期普通紙の性格が明確 |
| 銭文字のシャープさ・エッジ | エッジがやや甘く、繊維影響による輪郭の揺れが出やすい | エッジが整い、線幅が安定。輪郭が保たれる | 甘さは少なく、エッジは素直。ただし極端な鋭さはない | 線の立ち上がりが良く、輪郭が比較的明瞭 |
| インクの滲み・にじみ方向 | 繊維方向に沿ったにじみが出やすい | にじみが抑制され、方向性が弱い | にじみは軽微。方向性は弱く、最後期寄り | にじみはごく小さく、方向性もほぼ認められない |
前期印刷と後期印刷の用紙の特徴を調査
最後に、繊維1本1本を追える裏面の写真を使ってAIで分析をしてみた。右側の切手は裏面が剥離していないため、左側のみを対象とした。結果は後期普通紙の後半ロット〜最後期普通紙への移行帯とのこと。印刷面との結果とも整合性がある結果となった。
| 観点 | 後期普通紙(基準) | 最後期普通紙(基準) | 調査対象(今回) |
|---|---|---|---|
| 繊維の分離度 | 中程度。繊維同士の絡みが残り、輪郭は連続的 | 中〜やや高め。繊維輪郭が比較的明瞭 | 中程度。輪郭は見えるが束状感が残る |
| 繊維の太さ感 | 細径主体。太さのばらつきはやや残る | 細径中心で均質 | 細径主体だが一部に太さ差あり |
| 繊維配向 | 概ねランダムだが、局所的流れあり | ランダム性が高い | 概ねランダム。弱い流れ痕が点在 |
| 地合いの均一性 | 比較的安定。弱いムラは残る | 均一性が高くムラが目立たない | 安定しているが微細な濃淡ムラあり |
| 表面の緻密さ | やや緻密。繊維端の露出は限定的 | 緻密。表層が均され凹凸が少ない | やや緻密。最後期ほどではない |
| 光の反射 | 穏やか。局所的な微反射あり | 面全体で均質な穏反射 | 穏反射。局所的なキラつきがわずか |
| 異物・着色点 | 少数点在 | ごく少量 | 少数点在(後期普通紙と同程度) |
| 色味(紙色) | 中性〜やや灰白 | やや明るい灰白 | 中性灰白。最後期ほど明るくない |
| 解像度変化への耐性 | 高解像度で印象変化は小 | 非常に安定 | 高解像度でも印象は安定 |

